「ソフトバンクビジョンファンド」についての一考察
10兆円規模の資金規模のソフトバンクビジョンファンドが立ち上がった。
ものすごい規模だ。
単純に考えるならば、日本で時価総額最大のトヨタ(19兆円程度)の過半数の株式を買い、傘下に収めることすら可能な規模だ。
日経新聞によると、米国と中国のベンチャーファンドの合計(約8兆円)をさらに上回るという。
投資先はテクノロジー分野である。
資金の出し手は、運用者であるソフトバンク以外に、サウジアラビア・アブダビといった産油国、それ以外にもアップル、クアルコム、鴻海等と、華々しい。
少しだけ詳細に見てみる。
投資先は特に「米国の」テクノロジー関連企業である。孫社長は5兆円を米国に投資するとトランプ大統領に約束しているので、少なくとも半分は米国に投資されることになる。
そして、出資者は5割がサウジアラビア、3割がソフトバンク、1割がアブダビ、その他の企業はこのファンドの規模に比べると申し訳程度である。
このファンドは見方によっては、サウジアラビアから米国へのお金の流れをソフトバンクが仲介しているものとみることもできる。
このサウジアラビア→米国へのお金の流れに関してみてみると、ソフトバンクビジョンファンド以外にも似たような動きが最近他にもある。
- 米国インフラへの投資: 米大手投資ファンド大手ブラックストーンを通じて2兆円程度を投資する計画を発表
- 米国からの大量の武器購入:11兆円規模の武器を10年間で購入するということを発表。最大級の武器取引 (https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170520-00000083-asahi-int)
これらをソフトバンクビジョンファンドへの投資と合計すると、20兆円近くの資金がサウジアラビアから米国に流れることになる。
なぜこのようなことが起きているのだろうか?
急に米国内への投資の旨味が増したのだろうか?
可能性としてあるのが、トランプ政権・米国との「政治的な関係」の為にお金を出しているということだ。
トランプ大統領は米国内の雇用増を重視している。このトランプ大統領のいる米国との政治的な協力の為に、(経済的なリターンは度外視で)お金を出しているということだ。
実際に、トランプ大統領は、サウジアラビアの米国内への投資の話の後に、「(米国の)雇用、雇用、雇用」と言ったという。 https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170520-00050175-yom-int
少なくともトランプ大統領側としては、米国内雇用確保の為にサウジアラビアにお金を出してもらっている意識である。
このように見ていると、まずトランプ政権が誕生することによって、何らかの政治的な理由から、サウジアラビアから米国にお金が流れる条件が生まれた。
孫社長はその流れをくみ取り、サウジアラビアから米国へ流れるお金の管理者としてのポジションを確保した。そのことで、今後の投資資金不足の問題を解消しようとした。
これが「ソフトバンクビジョンファンド」だ。このようなことなのだろうとみることが出来そうだ。
国際的な大きな資金の動きを俯瞰し、先読みした見事な動きだと思う。
一方確保した資金の投資先を見つけ、リターンを上げられるかどうかについては、結構難易度が高そうだ。
日経新聞によると、世界のベンチャーキャピタル二大市場である米中のベンチャーキャピタルの資金の規模は合計で8兆円、米国で4兆円。
これは、純粋に経済的に採算の合うかどうかという観点で見た場合に投資対象は合計8兆円、米国だけで4兆円しかないということだともとれる。
それを上回る10兆円の規模の資金を新たに投資するとなると、採算の合う投資先が足りなくなる可能性がある。採算の合わない会社や投資案件にも大量に投資をせざるを得なくなる可能性も少なくないのではないか。
投資先にまだ目星がついているわけでもなく、これから探していくようにも見えるが、大丈夫だろうか。
すあま