日本はいつまで技術大国か?-ドローン分野では少なくともそうでない
2017 年の 7 月からドローンによる無人飛行タクシーがドバイで開始されるとのこと。
ドバイは 2030 年までに交通量の 25% を無人化しようという計画を持っており、今回の取り組みはその一環だ。
恐らく本格的な普及には安全など課題は山積みだろうが、それでも明らかに最先端の取り組みだ。昔の漫画なんかで見た未来都市が実現に一歩近づいている。
そして、ここで使われるドローンの機体は、中国メーカーの EHANG 社が提供することになるということだ。
EHANG社は、小型のドローンのメーカーとして実績を積みながら、明確に人を乗せる飛行交通手段としての大型ドローンのメーカーになることを将来のビジョンとして掲げている。
今回はその大型ドローンEHANG社と先端都市を目指すドバイの両方の方向性が一致したのであろう。
さて、このドローンの分野はEHANG社にとどまらず、海外メーカーのプレゼンスが圧倒的である。少し古い2015年の米国市場のデータによると、特に中国メーカーであるDFI が、全体の5割を占め、次に米国メーカーの AeroVironment と 3D Robotics が合計で2割を占める。日本メーカーの影はない。
別にすべての先進分野で日本メーカーが世界的にリードをする必要は全くないのだが、このようなエレクトロニクス製品はいかにも日本が本来強そうな分野である。それに、もし将来の交通手段にもなるのならば、とても重要な分野にも見える。
この状態は意図したことなのだろうか?
もしそうでないしたら、それは何が原因なのだろうか?
高いコストか?部品サプライヤーがいないことかか?ベンチャーが育たない環境か?新しい分野に投資する資金がなかったことか?トライアンドエラーを許さない安全重視の規制?それとも全部か?
少し飛躍するが、もし今後先端分野でリードしたかったら、何をしなくてはいけないのか?何を捨てるべきなのか?
すあま
コンテナ が グローバリゼーションの仕掛け人か
コンテナ。
あまり普段の生活では意識することはない。
荷物を運ぶときに使われる、鉄やアルミでできた、同じ形をした大きな箱である。
1965年に初めて使われ、今は世界中で荷物を運ぶのに欠かせない箱である。
コンテナは、「コンテナ船」と呼ばれる船に載せられて、世界の港から港を移動する。
一つ一つの箱の中には、服やらおもちゃやら、家電やら、車の部品やら、色々な荷物が載せられ、世界を旅する。
「コンテナ港」と呼ばれる大型の港では、自動化された大きなクレーンが待ち構えており、次から次へとコンテナを下す。
そして、これらのコンテナは、トラックに載せられて、津々浦々へと運ばれるのだ。
今や物流の中で欠かせないながら、あまり注目されることのない地味な箱。このコンテナの歴史にスポットライトを当てたのが、書籍『コンテナ物語』(原題: The BOX)を書いたエコノミストのマルク・レビンソン氏である。
そして、彼がこの本で書いている主張は興味深い。
世界中を物が行きかう『グローバリゼーション』は、このコンテナの発明によって成し遂げられたということである。
コンテナが発明される前までは、荷物の輸送は、袋や箱等のいろいろな入れ物で、それも色々な形で行われていた。
そのような状況で、港での荷物の積み下ろしは多くの港湾労働者によって行われていた。これはとても時間と労力がかかる作業だった。また途中で荷物が盗まれたり、壊れたりすることは日常茶飯事だった。そういうことで海上輸送コストは安くなかった。そして輸送コストのかなりの部分をこの荷物の積み下ろしが占めていた。
同じ形のコンテナの発明によって、荷物の積み下ろしは機械化(大型クレーンやリフトの利用)・自動化が出来るようになり、輸送コストは大幅に低下した。
そのことで、遠く離れた地域(例えばアジア→アメリカ)からも安く物を持ってこられるようになった。「サプライチェーン」という言葉が生まれ、世界中で一番安い地域から物を買ってくるという考え方が当たり前のようになってきた。
低コストを強みとして後進国はアメリカ等の先進国に輸出を行い、新興国として発展をした。一方で、消費者に近いことで胡坐をかいていた高コストの先進国企業は衰退した。
そして、モノが世界を行きかう「グローバリゼーション」の時代がやってきたというのだ。
地味な一つの箱に焦点をあてて、大きな世界の変化を語る議論はとてもダイナミックだ。
またこのコンテナの事例は物流に携わっている人以外にも大きな示唆があると思う。コンテナが箱のサイズを規格化したように、何かを規格化するだけで大きな変化を起こすことが可能かもしれないということだ。例えば、インターネットはどうか。情報がかなり混みあっているが規格化することでどのような変化が可能になるだろうか。
ちなみに、最近は反グローバリゼーションの動きが、先進国を中心に強まっているようにも見える。これも、このコンテナがもたらした作用の一つなのだろう。
suama
インドのパレードは何かすごい ~ India Republic Day 2017
「インド人もびっくり」という言葉がある。
この言葉はどうやら元々はカレーのテレビCMのフレーズだったとのことだが【出所】、カレーのCMを超えて、様々な場面で驚きを表すのに使われることもある。
私もたまに軽々しく使うこともあった気がするが、ある動画を見て、認識を改める必要があると感じさせられた。
それが下の動画である。
毎年1月26日はインドの三大記念日の一つ、「Republic Day」である。独立共和国となったインド憲法の施行が1950年の1月26日に行われたが、これを祝って、毎年外国首脳も呼び、パレードを行っている。(尚、日本の安倍首相も2014年に参加している)
そしてこの動画は、今年(2017年)の「Republic Day」のパレードの様子を収めた動画だ。
パレードの最初に出てくるのは軍隊である。陸軍・海軍・空軍・ラクダ騎兵・特殊部隊、次々と登場する。
ここまではどこの国でもありそうだが、パレードを見ているとだんだん予想外のものが登場する。
- 獅子舞のようなもの
- ねぷたのような大きな人の像と、その周りで踊る人
- 動く亀
- ボリウッドのようなダンス
- 回転する人形
- 動く船
- スキー場
- 大きな手のひら
- 阿波踊りのようなダンス
- バイクの上で10人位で組体操する人
- バイクの上で組体操しながら前後左右に回転する人
等がこれでもかとばかり次々に登場するのである。だんだん楽しくなってくる。
恐らく一つ一つに意味があるのだと思うが、少なくともそれを知らない外国人にとっては、一方的にびっくりさせられ続けてばかりである。
しかし、これを見ているインド人は、それほど驚きの表情を見せない。特に時折アップになる首相は表情を全く変えていないのである。
これを見せられると、インド人をびっくりさせられる気が全くしない。もし仮にびっくりさせられるとしたら、相当な驚きに違いないのである。「インド人もびっくり」というのはそういうことなのだ。
そして来年が楽しみである。
すあま
中国政府のビットコインへの規制は、日本国内の仮想通貨の盛り上がりに水を差すか?
「仮想通貨」
「ビットコイン」
日本国内において、最近このような分野が盛り上がってきているようだ。
2016年5月に仮想通貨の取り扱いについて定めたいわゆる「仮想通貨法」が成立、2017年には施行される予定だ。
2016年には仮想通貨の代表である「ビットコイン」の価値が2倍以上に値上がりした。
このようなことが盛り上がりの背景にあると思われる。
【参考】2017年“仮想通貨法”施行、「フィンテック」関連株は本格飛翔へ <株探トップ特集>(株探ニュース) - ニュース・コラム - Yahoo!ファイナンス
この盛り上がりの中、仮想通貨や、その基盤になっている「ブロックチェーン技術」について色々な話を聞く。これらはインターネットの出現に匹敵するほど大きな潜在力がある云々。
ただ、まだその可能性について十分に腹落ちしていないところがある。本当なのだろうか? と思うところがある。
多分私がまだ勉強不足なのだろうと思う。その勉強を始める意味もあってこのブログのエントリーを書いている。
仮想通貨の代表といえば、「ビットコイン」である。
私は実はこのビットコインを使うメリットがまだ分かっていない。色々言われている中で一番のメリットだと思うのが、銀行を使うのに比べて海外送金が速く、その手数料が安いということだ。ただ、これは本当に仮想通貨だからこそのメリットなのか少し疑問でもある。
銀行の間の送金は、何もお札を空輸しているわけではない。銀行の口座の数字を変えているだけだ。
今、銀行に行けば国内送金はすぐに行うことができる。海外送金は確かに不便だが、本当は(技術的には)やろうと思えば海外送金であっても、国内送金のように、すぐに、そして安く送金できるのではないだろうか?
ただそれをしていないのは、政府の規制があって、資金洗浄を防ぐチェック等をしなくてはならず、その為に時間とコストがかかっているからではないのか?
仮にそうであれば、ビットコインの銀行よりも早く・手数料が安いというのは、現段階で銀行と違って規制されていないからであって、いつか規制をされるようになった場合、このメリットは消える。そういうことにならないだろうか?
本当のビットコインのメリットはなんなのだろうか?
ヒントになりそうな面白い事実がある。
世界のビットコインの取引の9割が中国で行われており、「マイニング」と呼ばれるビットコインの生産に関しても、世界の生産の7割が中国内で行われているということなのだ。
【出所】
少なくとも現段階において、ビットコインは事実上、中国用の仮想通貨なのである。中国内においては、使うメリットがとてもある。逆に、中国以外ではほとんどメリットがないともいえそうな状況になっている。
ではそのメリットは何か?
中国では、現在の人民元が高すぎ、今後人民元安になるという見方をする人が多い。その為、今のうちに人民元をドル等の外貨に換えておこうという動きがある。これに対して、政府は人民元が安くならないように、人民元をドル等に換えることに規制をかけている。
(それにしても、トランプ米大統領が、中国政府が人民元を意図的に安くしていると批判している一方、中国政府が人民元が安くならないように規制をかけているというのは興味深い)
そして、この規制をかいくぐる手段として、ビットコインが使われているという見方がある。
【出所】Chinese Investors Buying Up Bitcoin as Yuan Falls - WSJ
これはとても腹落ちするメリットに感じる。昨年値上がりしたというのも、中国人投資家の資金が背景にあるとするならば納得がいく。
一方、中国政府は人民元をコントロールしたい訳なので、当然その規制の抜け穴となっているビットコインには注目している。そして徐々に規制を強めている。
特に2017年に入ってからはいくつかの動きがあった。
- 1月6日: 中央銀行が中国の3大ビットコイン取引会社に調査開始を通知
- 1月11日: 中央銀行が3社に抜き打ち調査に入る
- 1月18日: 調査結果を発表、規定違反や資金洗浄への対応不備があると指摘
- 2月8日: 調査対象を9社に拡大。9社に資金洗浄対策等の強化を要求
- 2月9日: 中央銀行、今後規定違反が厳重だった場合には取締ると警告。結果、大手3社が取引を一時停止すると発表
【出所】 暂停提现!为此,中国打响第一枪! _ 东方财富网(Eastmoney.com)
これらの一つ一つの動きに対し、ビットコインの相場は大きく影響を受けている。例えば、2月9日には、15分程度の時間でビットコインの価格が1割程度下がった。日本円等の他の通貨の変動と比べると相当な下落である。
現在、日本においては、仮想通貨に関して、盛り上がっているように見える。
仮にだが、更に中国政府が規制を強め、ビットコインの価格が大きく下がる、もしくは中国内での利用がなくなるということがあった場合、この盛り上がりは水を差されて無くなってしまうことはないか? それとも、やはり中国とは関係なく発展していくのか? 気になるところである。
私はビットコインや仮想通貨について専門家ではないので、考えが足りていないところもあると思う。その点ご容赦ください。
すあま
「サッカー版爆買い」の次に、「スキー版爆買い」があるだろうか?
中国のサッカーチームが、信じられない額の報酬で欧州リーグのスーパースターを引き抜くニュースを最近よく耳にする。あまりに多く耳にするので、もう慣れてしまった感もある。
下は世界のトッププレイヤーの報酬上位20名のランキングだが、トップの2人を含め、上位20人のうち既に6人が中国スーパーリーグでプレイする選手だ。
<世界サッカー選手報酬トップ20(2016.12)>
- Carlos Tevez : 中国スーパーリーグ 上海申花
- Oscar : 中国スーパーリーグ 上海上港
- Cristiano Ronald
- Gareth Bale
- Lionel Messi
- Hulk : 中国スーパーリーグ 上海上港
- Paul Pogba
- Graziano Pelle :中国スーパーリーグ 山東魯能
- Neymar
- Wayne Rooney
- Robin van Persie
- Yaya Toure
- Sergio Aguero
- Luis Suarez
- Asamoah Gyan : 中国スーパーリーグ 上海上港
- Ezequiel Lavezzi : 中国スーパーリーグ 河北華夏
- Zlatan Ibrahimovic
- David Silva
- David De Gea
- Bastian Schweinsteiger
【出所:Telegraph】
このような海外からの引き抜きは中国の「サッカー版爆買い」ともいうことが出来るだろう。
それにしても、中国のサッカー市場は大きいだろうし、企業にとっては広告の役割もあるのだとしても、こんなに大金を払って本当に採算は合うのだろうか?このように考える人は少なくないと思う。
この疑問に対する一つの答えとしては、このような「サッカー版爆買い」には、採算どうこうということを超えて、政治的な理由もあるのだと考えることもできる。
中国では政府の力・権限はとても強く、政府との関係をいかに良好にするかということは、多くの企業が非常に気を使っていることである。
そして、有名な話でもあるが、政府の最高権力者である習近平国家主席は大のサッカー好きなのである。彼のサッカー好きを表す逸話は事欠かない。
そして、中国チームを強くし、ワールドカップに出られるようにすることは彼の夢なのである。
- 2011年に「中国サッカーの3つの夢」として ①中国チームがワールドカップに出場すること・②中国でワールドカップを開催すること・③中国チームがいつの日かワールドカップで優勝することが夢だと語っている 【参考】
- 2014年にアルゼンチン副大統領と会談した際に「私はサッカーが大好きだ。一日も早く中国がワールドカップに出られるようになることは私の夢だ。アルゼンチンには是非中国のレベルの引上げを手伝って欲しい」と語っている【参考】
このようなサッカー好きで、中国のサッカーをなんとか強くしたいと言っている国家主席を目の前にして、企業が若干採算度外視だとしても、海外からスーパースター選手を招聘しているのだと考えることも不自然ではないように思える。
もしかすると「スキー爆買い」があるのではないか?
実は、習近平氏が強くしたいと思っているスポーツが他にもある。それはスキーだ。
中国は、2022 年に北京で初の冬季オリンピックを開催する予定だ。5年後の開催に向けて現在会場建設などの準備が進められている。
そして冬季オリンピックで花形のスキー関連の種目で、今のところ中国はまだ強豪国とは言えないレベルである。競技人口が少ないこともあるのだろう。
このことについて、以前から彼は気にしている。
- 例えば、2014 年にロシアのテレビ局のインタビューを受けて、彼はこう言っている「中国は冬季オリンピック種目、特にスキーでは強豪国に大きく差をつけられている」 【参考】
そして冬季オリンピックを5年後に控えた 2017年1月23日、習近平氏はオリンピック会場となる河北省のスキー場を訪れた。その時に、明らかにスキーを盛り上げたいことを明らかにした。
- 「中国のウィンタースポーツには弱点があるので何とかしないといけない。選手は頑張って北京オリンピックでいい成績を取ってほしい」【参考】
- 「ウィンタースポーツの選手に対しては、国が全力でサポートする」
- 「北京オリンピックの重要な目的の一つは中国のウィンタースポーツの発展だ」
- 「もっと多くの投資家に中国のウィンタースポーツ産業の発展に注目をし、貢献をしてもらいたい。」【参考】
この様子がテレビで大々的に報道された。
もし仮に「サッカー版爆買い」が政治的な理由によるものならば、同じように、今後「スキー版爆買い」が起きることもありえるのではないだろうか?
「スキー版爆買い」があるとしたら、きっとスター選手を買うのではないだろう。きっと海外の会社を買うのではないだろうか。
スキー場やスケート場の開発会社、リフトや積雪機などの設備会社、スキーウェアやスキー器具の会社、スキースクールやスキーツアー等の関連サービス会社、こういう会社を買収できないかと中国企業は既に検討し始めているのではないだろうか。
すあま